2016.06.24 Friday 18:41

慢心した坊ちゃん

 先月の本欄で、アベ化する世界という駄文を書いた。アベ化の張本人は、サミットからの1週間で、臆面もなく自己中心主義をさらけ出し、矛盾を正当化する強弁を繰り出すという意味で、アベ化をさらにふかして驀進している。  参院選で勝つためには、消費税率の引き上げを延期せざるを得ない。しかし、現在の法律では延期のためには世界恐慌のような重大な事由が必要となる。そこで、サミットでリーマンショック前夜という危機感を醸成しようとしたが、外国首脳やメディアにバカにされただけ。最後に、リーマンショック前夜なんて自分は言っていないと前言を翻し、新しい判断によって増税を延期した。外国の首脳やメディアはだませないので、日本国民と国内メディアを新しい判断という言葉によって騙そうというわけだ。国民もメディアも甘く見られたものである。  我々はみな、子供のころ、自分は正しいと言い張ったものだが、親や教師に叱られながら、間違いがあれば素直に認めて謝るという大人の態度を身につけてきたはずである。その点、安倍首相は躾を受けることなく年だけ取った、オルテガが『大衆の反逆』で言った「慢心した坊ちゃん」なのだろう。 こんな坊やに権力を預けておいてよいのか。ここは、国民が厳しいお仕置きをする時である。 東京新聞6月5日

2016.06.13 Monday 18:42

市民の力

 参議院選挙の投票日まで、1か月を切った。世論調査では内閣支持率、自民党支持率はともに安定しており、民進党はいたって不人気である。野党は大都市の複数区や比例区で苦戦することが予想されており、改憲勢力で3分の2を超えるという事態も起こりうる。  この苦境を乗り越えるためにも、最近の日本社会における市民の力の高まりを確認したい。1人区の野党統一の実現は、安保法制成立後も多くの市民が憲法の擁護と野党の協力を訴え続けたおかげである。今までの日本政治では、有権者は政党が示したメニューのなかから候補者を選ぶだけの受け身の存在であった。しかし、今回は自らメニューを作ることに加わった。これは画期的な出来事である。  また、先の国会でヘイトスピーチ規制法が成立し、川崎市で計画された差別主義者のデモが中止に追い込まれた。この時、多くの市民が現場に集まり、道路にシットインを行った。警察は市民を規制するのではなく、差別主義者にデモの中止を求めた。市民の圧力が警察の対応を変えた。  もちろん、この参院選で改憲の動きと戦うことは急務である。ただし、私たちは日本における市民の力の高まりについて、楽観と自信を持つことができる。必ず最後に市民は勝つ。 東京新聞6月12日

2016.05.30 Monday 18:56

サミット偽会議録

 本日はお忙しいところ遠方よりご参集いただき、ありがとうございます。お宗旨の違う皆様にもお宮参りをしていただき、日本の良さを味わっていただけたことと存じます。さて、今回の会議の最重要課題は世界経済の危機です。この際、積極的な財政出動で足並みをそろえたいと。  何を言っているのよ。私のところは経済も順調。おかしいのはあんたの所だけでしょ。今借金をして公共投資なんかしても意味はないわよ。30年ほど前のサミットで、あなたのお父さんのボスだった福田という首相とうちの国の首相が世界経済の機関車になるとか言って滅茶苦茶な財政出動をして、後始末が大変だったんだから。うちは難民の世話もしなきゃいけないけど、あなたの国は何をしてくれるの。カナダのイケメン首相は、その点やることが違うわね。  パナマ文書で今までの税金逃れがばれて叩かれまくっているうえに、EU残留をめぐる国民投票を控えて、世界経済どころではないよ。うちは福祉を切り詰めて貧乏人から搾り取ってるんだから、財政出動なんて論外だ。  空理空論はもうやめだ。うちは既成政治家をぶった切る怪しげな男が俺の後釜を狙ってるんだ。みんなきちんと仕事をしよう。シンゾウ、自分の家の不始末は自分で片づけることだな。あんたの人気取りに付き合うのもこれで終わり。 東京新聞5月29日

2016.05.23 Monday 18:54

文明の終わり?

 オリンピック招致をめぐる不正資金疑惑は、日本という国が底なしに腐蝕していることを物語る。東京招致にとっての最大の障害は、福島第一原発事故による放射能汚染への外国の懸念だった。この問題を覆い隠す粉飾工作として、安倍首相の「アンダーコントロール」発言と、コンサルタントへの資金提供は結びつく。表における虚言、裏での買収工作。絵に描いたような腐敗である。  人口減少と財政赤字の日本が世界的な宴を催して経済の浮揚を図り、人心を明るくしようとしても、宴の準備に体力を使い尽くし、宴を楽しむどころではない。さらに宴の後には巨額の請求書が待ち構えている。競技会場の整備費は当初試算の4倍の3千億円に膨らむという新聞報道もあった。  こんな腐蝕した国で安倍首相が全能の権力者のごとくふるまうのは滑稽である。彼が行政府のみならず立法府の長だと自称したのは、議会の多数派の親玉として法も自分の意のままに作り替えられると言いたかったのだろう。しかし、自分の都合の悪いルールは無視してもよいという驕りこそが、日本の腐食の根源である。  政府が粉飾をすれば、日本を代表する企業でも検査データのねつ造やら不正経理が横行する。日本は文明の崩壊に向けて急坂を転がり落ち始めたという危機感を、私たちは持たなければならない。 東京新聞5月22日

2016.05.16 Monday 18:50

アベ化する世界

 いま世界にアベ的権力者という妖怪が増殖している。世界はアベ化しているというべきか。この妖怪には以下のような特徴がある。第1に、自己愛がきわめて強く、自分を正しい、美しいと思い込む。第2に、自己愛の裏返しで、自分に対する批判や責任追及に対しては一切耳を閉ざし、欠点を是正するという意欲を持たない。第3に、自己愛の過剰ゆえに、自分を攻撃するものに対して過度に攻撃的になる。第4に、自分が敵とみなす者を攻撃する際には、嘘、捏造も平気で行い、虚偽の主張が明らかになっても恥じることがない。  もちろん、日本はアベ化の先頭を走っている国だが、米国では同じような特徴を備えたドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補になることが事実上決まった。フランスでは、移民排斥を唱える極右政党国民戦線の幹部が、日本の新聞のインタビューに答えて、日本の自民党こそ自分たちの手本だと語った。民主政治の伝統を持っている国でも、人々の欲求不満に付け込んで、庶民の自己愛をくすぐり、デマで敵に対する憎悪をあおる政治家が台頭している。  アベ化を防ぐには、事実に基づく議論をすること、自分自身を的確に認識して、長所と短所をバランスよく評価することが必要である。この夏の選挙では、日本人がどこまで知性と品性を保っているかが問われる。 東京新聞5月15日

2016.05.09 Monday 18:50

立憲対非立憲

 憲法記念日の前後から、各紙で憲法関係の記事が増えたが、その中でも「立憲対非立憲」という言葉が目立つようになった。今の日本で問われるのは具体的な政策以前の、政治の土台である。 利害や立場を超えて共有すべき政治の基本的なルールが何かを確認することこそ課題である。多数者、為政者といえども従わなければならないルールが存在するという考えこそが立憲思想である。  基本的人権が尊重され、民主政治の基本的なルールが確保されていれば、政府が誤った政策をとった場合には市民の反対と野党の努力によって、誤りを是正することができる。 しかし、権力がメディアを規制したり、学問を抑圧したりすれば、政治の誤りを誤りとして認識すること自体が困難になり、国民はいつまでも圧政に支配されることとなる。だからこそ、増長した非立憲の権力は、自らの失敗を客観的に検証するメディアや学問を目の敵にしてきたのである。  幸い、各紙の世論調査では、憲法、特に9条の改正に反対する人の割合が目に見えて増加している。これは、安倍晋三首相の非立憲的な手法が国民の危機感を呼び覚ましたと解釈するしかない。立憲政治を守るために、この危機感が世論調査への回答だけでなく、参議院選挙における投票にも表れることを願っている。 東京新聞5月8日

2016.05.02 Monday 18:37

戦争のできる国

 日本がすぐに戦争をするとは思わないが、安保法制や特定秘密保護法は日本を戦争のできる国に変えた。そのことは地震という緊急事態に際して露わになっている。  戦争のできる国では、政府は国民を騙し、真実を国民の目から覆い隠す。また、メディアが真実を伝えないように統制する。九州中部の地震を契機に、現在日本で唯一稼働中の鹿児島県、川内原発の安全性に対する不安が高まっている。しかし、政府は安全審査をクリアしたという一点張りである。NHKに至っては、地震の発生地点、震度を示す九州の地図から、鹿児島県だけを消し去って地震情報を伝えていた。敗戦を隠蔽した昔の大本営と同じ発想である。  また、戦争のできる国では権力者やそれにつながるイヤな男たちがやたらと威張り散らし、他人に口出しをする。服装がモンペや国民服に戻ることはないが、生き方については耄碌した爺さんや一部のばあさんが、女性に早く結婚しろとか、子供を作れと説教を垂れる。世の中の仕組みの不備を批判したら、そんな人間は外国に出て行けと怒る。  戦争のできる国の抑圧や画一化は進行しているのである。それをはね返すには、憲法の原理を思い起こし、戦争のできる国を作った張本人たちを選挙で落とさなければならない。それこそ主権者としての義務である。

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