2014.07.02 Wednesday 15:11

安倍首相という駄々っ子

 

 日本には「泣く子と地頭には勝てぬ」ということわざがある。安倍首相は、泣く子がそのまま地頭になったようなものである。集団的自衛権の行使を正当化する閣議決定は、それを必要とする新たな問題に対処するものではない。安倍首相が駄々っ子のように、「僕、これ欲しいんだもん」と言い張って、決められた。


 だから、論理は皆無である。政府与党は、集団的自衛権が必要となる理由を一応あげて国民を説得しようとした。それらの事例なるものはことごとく机上の空論であり、詭弁である。そのインチキを我々が指摘し、集団的自衛権は有害であることを論証しても、相手は泣く子である。泣く子にいくら道理を言い聞かせても、無駄である。


 しかし、諦めるわけにはいかない。泣く子と地頭には勝てぬとは、権力に従順な日本の政治文化を表している。今こそそんな文化を変えなければならない。閣議決定をされても、本当の政策転換はこれからである。これから長い戦いが続く。安倍首相が単なる泣く子だということを国民に理解してもらえば、事態は変わる。


東京新聞7月2日


2014.06.30 Monday 15:08

自分たちの流儀

 

 ワールドカップにおける日本代表チームの敗北は、普通にサッカーを見る者にとってはほぼ予想通りの結果であり、特に失望するという話ではない。一つ気になったのは、初戦で敗退して一次リーグ通過が難しい情勢になっても、選手が「残りの試合でも自分たちのサッカーをするだけだ」と言っていたことである。


 ギリシャ戦では相手に退場者が出て、一人多い状態で自分たちの形で攻め続けることができた。それでも点は取れなかった。自分たちのやり方が通用しないということである。次の試合で勝とうと思ったら、試合に勝つために自分で修正しなければならない。その点で工夫が見られなかった。


 話はやや飛躍するが、自分の流儀にこだわって、それが外の世界に通用しないことに鈍感であるという特徴は、日本の組織に広く共通しているように思える。政治の世界では、オレ様の流儀を丸出しにして何が悪いと言わんばかりの失言、放言が相次いでいる。サッカーであれば外国の強いチームとぶつかって、自分たちの流儀が通用しないという現実にいやでも気づかされる。ところが政治の世界では、井の中の蛙たちは閉じた空間で強がりを言い続けられる。


 世界に通用しないのは、サッカーだけではない。トンデモ発言を放任し、非常識な同僚をかばう政治家たちも、世界に背を向けているのである。

東京新聞6月29日


2014.06.23 Monday 15:03

ペテン師のやり口

 安倍首相が執念深く集団的自衛権行使を進めようとするので、私もしつこくこれに反対するコラムを書かなければならない。

 今のところ、ペルシャ湾を念頭に置いて、機雷の掃海作業のために自衛隊を派遣するために集団的自衛権が必要だという話になっている。これまた新たな詭弁である。石油の輸送が止まった我が国の存立に著しい影響が出るから、輸送路を確保するために自衛隊が出動しなければならないというのが政府の言い分である。しかし、機雷除去は戦闘活動の一環であり、名目は何であれ自衛隊は戦争に参加することになる。また、ペルシャ湾口のほとんどの海域では機雷除去作業は必ず他国の領海に入って行わざるを得ない。その意味でも、他国の戦争に自衛隊を派遣しないという首相の従来の説明と矛盾する。


 石油の輸入が止まったら一大事だが、機雷をどければ石油輸送が可能になるのか。これも政府はごまかしている。戦闘状態が続いている限り、自衛隊が危険を冒して機雷を除去しても、安定的に石油を運ぶことはできない。機雷は小手先の話であり、中東での戦争を回避すること以外に石油の安定供給の道はないのである。


 見え透いた詭弁を弄するとは、自ら設定した期限が迫り、戦争好きのペテン師もあわてているのだろうか。

東京新聞6月22日


2014.06.16 Monday 15:06

宏池会とは何か

 

 12日は、大平正芳氏の命日で、同氏が率いた派閥、宏池会の政治家が墓参したという記事が本紙に載っていた。安倍政権が集団的自衛権を行使するという事実上の憲法改正を閣議決定で行おうとしている今、穏健保守政治家が集った宏池会を懐かしむ声が与野党から聞こえる。


 宏池会の開祖である池田勇人は、首相に就任すると忍耐と寛容を唱えた。このグループの政治家の特徴は、権力を使うことへの畏れを持つことである。人間は誤るものである。政治家が物事を決定することが国の命運を誤らせ、国民に大きな犠牲を及ぼすこともありうる。政策を決めるに当たっては、様々な意見を聞き、熟慮の上で進める。


 憲法9条の下に自衛隊を置き、我が国の防衛に専念するという防衛政策の基本を作ったのも、宏池会の政治家である。日米安保を安全保障の基盤としながらも、アジアの信頼友好関係にも努力した。この枠組みを今壊す必要があるのか。


 民主党が宏池会の路線を引き継ぐという意見もある。私もそれでよいと思う。ただし、宏池会の政治は知性と教養を重んじる。宏池会路線を自称する政治家が、反知性主義の日本維新の会と提携するなど、己の無知をさらけ出すようなものである。傲岸不遜で知性や論理を無視する安倍首相や橋下大阪市長は宏池会政治の対極である。

東京新聞6月15日


2014.06.02 Monday 15:56

野党再編という幻想

 日本維新の会が東西に分裂した。石原慎太郎氏のグループは安倍政権と同じ政策路線なので、野党にいる方が不思議だったのであり、分裂は当然である。

 新聞はこれが野党再編にどう影響するかという観測記事を書いている。しかし、私に言わせれば今野党再編をはやすのは、日本の政党政治をさらに堕落させることになる。ともかく数をそろえて自民党に対抗する政党を作ろうという発想は、かつての民主党で一度失敗したのである。

 橋下大阪市長や結いの党の江田代表は、次の選挙で党が消滅することを恐れてじたばた焦っているだけである。大阪の足元を見れば、維新の会が支離滅裂になっていることは明らかであり、結いの党には基盤がない。また、集団的自衛権をめぐる論戦では、橋下市長と江田代表の間でさえ大きな見解の相違があり、これに民主党が加わっても、安倍政権に対する明確な対抗勢力が作れるはずはない。絵の具をいくつも重ねていけば、最後は灰色になるだけである。

 メディアは一党多弱と野党の現状を意地悪く冷笑するが、数をそろえればよいという発想は本物の野党の再生をさらに遅らせるだけである。今はそれぞれの政党、政治家が安倍政権とどのような対決構図を作るか、信念に基づいて徹底的に主張する時である。

東京新聞6月1日


2014.05.26 Monday 15:55

むしろ翼賛議会を

 

 安倍政権が集団的自衛権行使を容認する方向性を示して以来、各界から解釈改憲に反対する声が上がっている。原発再稼働や基地の騒音をめぐっては、地方裁判所レベルではあるが、政府の責任を厳しく問う判決が出された。裁判官、宗教家、学者など、様々な分野の専門家が、日本の世の中に対して勇敢に異議申し立てをしているのである。


 それと全く対照的なのが、政界における野党である。先週は、日本維新の会のトップ会談で野党再編に向けた合意が図られた。民主党では、代表選挙の立候補要件を緩和せよという運動が始まり、これは海江田代表下しにつながるかもしれないと報じられた。まさに、今の野党につける薬はない。


 現在の政党政治は、一強多弱と言われる。それは、数の面だけではなく、知的能力についても言えることである。戦後の政治体制の根幹をめぐる論争が始まろうとしているとき、これに参戦せず、内輪の主導権争いにうつつを抜かすなど、言語道断である。こんな重要問題に党としての見解を打ち出して政府与党に対峙できないから、一強多弱なのである。


 いっそのこと野党は解散して一度翼賛議会を作ればよい。国会に自民党しかないという状況が出現すれば、自民党内でリベラル派が党を割る踏ん切りがつくというものである。

東京新聞5月25日


2014.05.19 Monday 13:08

クーデタの夢魔

  気が付くと、私は妙な制服を着て、市ヶ谷の防衛省で演説を始めようとした。そうか、集団的自衛権行使に反対する学者グループの代表として、防衛省、自衛隊に呼び掛けに来たのだった。

「諸君は、憲法9条の下、日本を守る自衛隊として、国民の生命と生活を守るために素晴らしい仕事をしてきた。平和に徹する活動は、国民の感謝と諸外国の信頼を勝ち取っている。今、内閣の憲法解釈の変更によって、自衛という金看板を捨て、外国の訳の分からぬ戦争に送られようとしている。自衛隊の誇りにかけて、こんなまやかしは断固拒否しなければならない。」


 なんだか、ハト派の三島由紀夫みたいだな。すると、数えきれない自衛隊員が列を組んで靖国通りを都心に向かって行進し始めた。「首相官邸に行って、外国の戦争のために死ぬつもりはないと伝えよう」という声が聞こえた。


「待ってくれ。シビリアンコントロールを破るのか」と言うと、「戦争知らずで戦争好きの政治家ほど、我々にとって迷惑なものはない。言葉で言っても止められないから力を振るうしかない。これこそ積極的平和主義だと、首相と取り巻きのばかな学者に思い知らせてやる」と誰かが言った。

「気持ちはわかるけど、冷静に考え直そう」という自分の叫び声で目が覚めた。

東京新聞5月18日


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