2015.02.23 Monday 10:12

テロに屈しない

 

 あの事件以来、誰もが「テロに屈しない」と叫ぶようになった。しかし、最近の政治の動きを見るにつけ、とりわけ政治家やメディアがテロに屈しないと唱和すればするほど、世の中全体はテロリズムに制圧されていくという逆説が存在するように思える。

 共産党の志位委員長の代表質問に対して、テロリスト政党というヤジが飛んだ。気に入らない政党をテロリスト呼ばわりするような者に、国会に議席を持つ資格はない。日本の国会議員の劣化を物語る出来事である。安倍首相はテロ事件への対応について厳しい追及を受けそうになると、テロに屈しないと言って、それ以上の議論は拒否している。

いずれの例も、テロという言葉は自分の政治的な優位を得るための道具となっている。そして、テロという言葉が一度使われたら、メディアも深い検証を放棄し、政治の世界では議論が止まる。

 テロに屈しないと言うときの主語は何か。個々の政治家はもちろんだが、日本の民主主義と自由こそ、テロに屈しない主語である。権力を持つ政治家がテロという言葉を恣意的に使って、自由な議論と活発な議会政治を封じ込めるなら、それこそ日本の民主主義がテロに屈したことを意味する。テロと闘いには、言論・表現の自由を実践する勇気が必要である。


東京新聞2月22日


2015.02.16 Monday 10:10

呪文

 

 日本人を震撼させたテロ事件は、政治家にとってはこの上なく有効な道具となっている。テロとの戦いと称して自衛隊派兵をもくろむのは直接的な利用である。その他、間接的な利用は枚挙にいとまない。

 沖縄での基地建設強行と並んで、議論のないまま進む原発再稼働とエネルギー政策の逆戻りが典型例である。原子力規制委員会は12日、高浜原発について、新規制基準を満たすとする審査書を決定し、再稼働は時間の問題となった。また、経産省の作業部会では、今後の電源として原発を維持すべきという主張が続々と出されている。

 安倍首相が、日本は変わった、テロとの戦いに乗り出すのだと言うなら、国内におけるテロの脅威を真面目に考えるべきである。原発の安全性は地震、津波などの自然災害だけでなく、人為的攻撃も想定して十分な対策を立てなければならない。原発の安全確保の本当のコストを明らかにすれば、そこまでして原発を継続することが合理的かどうか、議論は深まるであろう。

 あえて言う。テロとの戦いという言葉は、為政者がほしいままに権力を使い、重要な政策課題に関して議論を封じ込めるための、魔法の呪文である。我々が民主主義を支える主権者でありたいなら、こんなちゃちな呪文にだまされてはならない。


東京新聞2月15日


2015.02.09 Monday 10:08

無知のベール

 

 人質事件に対する一連の対応から浮かび上がるのは、安倍政権が国民の生命よりも、この機会に国家としての体面を整えることに意欲を持っているということである。生命軽視は、後藤健二氏の遺族に対して、今もって安倍首相から弔意の表明がされていないことからも明らかである。

 そして、国家の体面が大好きな政治家が、実際の戦いにおいては全く無能であることも、悲しいくらい明らかになった。首相は、中東歴訪の際に行った反テロ演説について、テロリストの心中を忖度すべきではないとして、正当化した。敵を知り己を知ることは、戦いの基本である。敵を知り、出方を探ることを、敵に同情することとして否定していては、賢い戦いはできない。

 首相は国会審議の中で、日本人の安全を守るために憲法9条の改正が必要だと、自説を繰り返した。これまた、己についての決定的無知から発する主張である。自衛隊は紛争地域に乗り込んで力ずくで日本人を救出することなどできない。

 国際舞台で自己陶酔的な演説をし、自衛隊を正規の軍隊として国際的な共同作戦に従事させる。これらはみな安倍首相の自己満足であり、日本人の安全とは何の関係もない。指導者が無知であることについて我々を無知にさせるために、特定秘密保護法がさっそく効果を表しそうである。

東京新聞2月8日


2015.02.02 Monday 10:18

惨事便乗の政治

 イスラム国によるテロについては、人質の解放を願うばかりである。この事件に関連して、安倍首相は国会論議の中で、この種の事件において邦人を救出するために自衛隊を派遣できるよう、法整備を進める必要があると力説している。これこそまさに、カナダ人ジャーナリスト、ナオミ・クラインの言うショックドクトリン、日本語で言えば惨事便乗型の政治である。

 囚われた同朋を助けられないことに多くの良心的な人々が無力感を覚えている状況に付け込んで、安倍首相は偽薬を売り込んでいるようなものである。この偽薬はたちが悪い。実際に使用すれば問題はさらに悪化するが、それは薬の量が足りないからだと為政者は言いつのり、より大量の薬を投入させようとする。人々も感覚がマヒして、同朋を守るためにはこの薬を使うしかないと興奮する。歴史を振り返れば、この薬の大量投与の挙句に戦争が起きている例が山ほどある。現実の問題として、自衛隊が中東に出動しても、人質を力ずくで奪還することなど不可能である。

 日本人が人質に取られ、殺されたという惨事に付け込んで有害な薬を売り込むのは、悪辣な詐欺師の手法である。人質事件をテコに自衛隊の行動ルールを変えるなどというすり替えを許してはならない。野党もメディアもひるんではならない。


東京新聞2月1日



2015.01.26 Monday 10:14

外交戦略とは何か


 イスラム国における日本人人質事件については、憤るばかりである。誰がやっても有効な解決策はすぐに見つからないので、政府の無策をいま責めるべきではない。しかし、問題がこのように展開したことについて、日本政府の対応が適切であったかどうか検証することも重要である。

 そもそも湯川遥菜氏がイスラム国で拘束されてから久しいし、後藤健二氏の留守宅には昨年11月に身代金の要求が来ていた。もちろん政府も事実を把握していたはずである。この2か月間問題解決のために何をしていたのか。さらに、この時期に安倍首相が中東を訪問し、イスラエルとの協力関係を強調するという対外的デモンストレーションを行うことが、人質事件にどのような影響を及ぼすか、政府内部で十分な検討を行ったのだろうか。

 安倍政権は、国民の安全を守るためと称して、日本版NSC(国家安全保障会議)を設置し、深い情報収集と戦略構築を売り物にしてきたはずである。2億ドルの身代金要求について政府首脳は想定外と言ったと報じられている。それはあまりにもお粗末な話である。

 安倍政権が進めてきた安全保障や外交の体制作りが、本当に国民の安全を守るのか。首相の言う積極的平和主義が、国民のリスクを高めることはないのか、この機会に熟慮する必要がある。


東京新聞1月25日


2015.01.19 Monday 10:24

国益を語るなかれ

 

 国益を振りかざせば、為政者は何でもできると思い込む。そして、安易に定義した国益は、むしろ国民に大きな犠牲と損失をおよぼす。これは多くの経験から導かれる経験則である。今また、昨年末の総選挙で勝利した安倍政権は、自分と国益を同一視するという権力者の陥りがちな落とし穴にはまろうとしている。

 自分の方針を全体の利益とみなせば、それに反対する部分の声はすべて雑音となる。為政者がいきがって国益に突進する時、特定の地方はそれを邪魔する障害になる。今はまさに沖縄が安倍政権の足に食らいついている。しかし、政権は力ずくで沖縄を振り払い、国益を追求しようとする。権力者は、沖縄も日本の一部であり、国益とは何かを定義する作業に応分の発言権を持つことを無視しており、全体の利益は糸の切れた凧のように、虚空を漂う。

 国益を背負う連中は当然自分を正義の味方だと思い込む。安倍政権は日本の「正しい姿」を世界に知らせるために、外国に拠点を設けて、広報活動を進めるとのことである。自己中心的な国益の追求は、ますます外国からの不信を招き、むしろ恥をさらすだけである。

 こんな下品で無知で無情な連中が国益を決めることこそ、最も国民の利益を損なう。皆が自分の考える国益をぶつけ合うところから、本当の国益が見つかる。


東京新聞1月18日


2015.01.12 Monday 14:58

70年の宣言

 近所の小学校で、創立70周年を記念して、新しい子供宣言を作るそうだ。生徒会長のアベ君は妙に張り切っている。

「ずっと前の先輩が隣の学校の子供をいじめたからといって、いつまでもうちの学校の生徒がいじめっ子というレッテルを貼られるのはおかしい。ボクは未来嗜好の宣言を作りたい。ついでに、3組はボクに楯突くオナガを学級委員に選びやがって、あんな連中はうちの学校の生徒じゃないから無視しちゃおう。」

すると、学校きっての秀才、キタオカ君も加勢した。

「昔の先輩と僕たちは別人格だ。それを一緒こたにするのは、悪しき集団主義的発想だよ。」

さすがに神童は難しい言葉を使う。

そんな高飛車な態度でいいのかなあと心配する善良な子供も大勢いたが、違うよと言える雰囲気ではなかった。どこかから話を聞きつけた担任の大浜先生が駆け込んできた。

「君たち、自分はいつも優等生ですなんていうバカげた宣言を世の中に向かってするつもりなの。それでほかの学校の生徒との仲がますます悪くなったら、先生は困ります。」

すごい剣幕だ。すると、間髪をいれず、アベ君が言った。

「だからボクは最初から言ってるでしょ。うちの学校の歴史を嫌嘘に振り返って、犯性の気持ちを表現しなきゃあって。」

「・・・・」


東京新聞1月11日


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