2014.03.31 Monday 12:09

さよなら、北海道

 今回は私事を書くことをお許しいただきたい。私はこの3月末で、30年勤めた北海道大学を辞め、東京に移る。この20年ほど、日本政治の変革を夢見て自分なりに闘ってきたが、矢尽き、刀折れという心境である。この辺で気分を変えるために、本拠を変えようというのが最大の動機である。
 北海道から日本政治を観察し、発信できたことは大変な幸運であった。東京だけにいては決して見えない日本の現実を知ることができた。私の政治批評は北海道に育ててもらったようなものである。残念ながら、今の日本は、オリンピック開催、戦略特区、TPP、原発再稼働など、東京圏の都合だけを優先する路線に傾斜している。そして、農業に対する過保護、公共事業の無駄など、地方をテコ入れする政策について、否定的なステレオタイプが蔓延している。
 しかし、日本の将来を考えれば、東京圏と地方が反目することは愚かである。金の亡者は地方を邪魔物と思っているようだが、日本はシンガポールのような都市国家にはなれない。大都市と森林や田園があって、日本という国はできている。東京圏を大地震が襲えば、救援の手を差し伸べるのは地方の人々である。
 多様な風土に多様な文化や産業が存在することに感謝することから、これからの経済や社会の再建策の議論を始めるべきである。

東京新聞3月30日
 

2014.02.24 Monday 12:57

大雪と政治

 

 関東甲信地方を二度にわたって記録的な大雪が襲い、多くの被害が出ている。ネット上でも話題になったように、政府の対応は迅速ではなかった。地震や台風と違って、雪は天災として恐れられていないように思う。それも、気候が温暖な太平洋岸に住む人の発想であろう。

 雪と政治の関係といえば、田中角栄という政治家を思い出す。田中は、雪に閉ざされた新潟県の山間部のために、様々な公共投資を進めた。田中の政治手法にはいろいろと問題もあるが、雪国の人間にも人間らしい生活ができるよう環境を整備することこそ政治の使命だと考えたこと自体は、いまに引き継ぐべき思想である。昔の自民党なら、すぐに大臣を現地に派遣して、対策を進めていただろう。

 確かにインフラ整備が進み、多くの地方でかつてのような不便さは解消された。そして、政治家の世代交代も進み、地域住民の悩みは苦しみを背負って政治活動をすることが、ドブ板政治と軽蔑される時代となった。今回の雪害への対応が遅かったのも、安倍政権が戦略特区に代表される大都市中心の成長戦略を推進していることと無関係ではない。

 国民の生命、安全を守ると安倍首相は常々叫ぶが、生命や安全も観念的なものでしかないことを、今回の雪害は示している。


東京新聞2月23日


2014.02.17 Monday 13:01

新たなオレオレ詐欺

 

 振り込め詐欺が多発しているというニュースを聞いたが、その後政治の世界では新しいオレオレ詐欺が猛威を振るおうとしている。この詐欺は、電話で個別に人をだますのではなく、テレビを使って不特定多数の人間をだますところに悪辣さがある。たとえば、こんな調子。

「オレだよ、オレ。総理だよ。公共放送の会長に下品なオヤジを送り込むのも、憲法解釈を決めるのも、オレの仕事。」

こいつは何様だといぶかっている人々に、

「だって前の選挙でお前たち、オレを選んだんだろう。だから、オレはお前なんだよ。お前が思っていることをオレがやってるんだから、お前はその通りに認めるのが当たり前だ。いずれ他国の戦争のために軍隊を派遣するときには、お前の子供たちも差し出せよ。ついでに公共放送の受信料もちゃんと払えよ。」

 こんな出来の悪い詐欺に引っかかってはならない。何でもオレが決めるという為政者の思い通りにさせないために、憲法がある。憲法解釈を決めるのは総理ではなく、裁判所である。ある憲法学者によれば、内閣法制局は行政府の顧問弁護士のようなものである。顧問を黙らせても、素人に正しい法解釈ができるわけではない。

 「オレ様の憲法解釈が裁判所で違憲判決を受けたって関係ない。」いい加減にしろ。


東京新聞2月16日


2014.02.10 Monday 12:56

絶叫の時代

 

 先日、日比谷公園で妻への愛を叫ぶというイベントが行われて、老若いろいろな男性がそれぞれに愛を叫んでいた。この種のイベント、11回くらいの遊びであれば、叫ぶ方も周囲も面白がっていられる。しかし、年がら年中、自分が世界の中心にいるつもりになって大声で愛を叫ぶのは、正気の人間のすることではない。普通の人は恥ずかしくてそんなことはできない。

それに関連して気になるのは、NHKの経営層の言動である。籾井という人が会長に不適格であることは明らかである。場末の居酒屋で中国、韓国はけしからんと酔っぱらいがおだをあげるのと同じことをしらふで言うような下品な人物を、公共放送のトップに据えるべきではない。

百田、長谷川の両経営委員はいわば、ひいきの引き倒しのような日本への愛を、場所もわきまえず絶叫しているようなものである。自分の感情を所かまわず、がなり立てなければ気が済まない人に発言の機会を否定するのは無理だろう。しかし、そうした奇人変人の類はまともな世間からは相手にされてこなかった。

奇人変人の妄言を批判する方がだんだん肩身の狭い思いをするようになると、それこそ言論の自由の危機である。ナチスだって最初は過激な論を主張する奇人の集まりだった。事は決して楽観できない。


東京新聞2月9日


2014.02.03 Monday 12:54

責任野党という疑似餌

 

 安倍首相は国会で責任野党と協力して憲法改正などに取り組みたいと言っている。責任野党とは、形容矛盾の見本のような言葉遣いである。

 統治の責任を負うのは与党である。責任を分かち合おうというなら、相手方の党を連立与党に加えるのが政党政治の常道である。野党はその定義上、統治の責任を負えない。議会政治においては、野党の責任は政府与党を的確に批判し、その誤りや行き過ぎを掣肘するところにこそある。政府与党に反対することが、あたかも税金の無駄遣いで、国政を停滞させるかのように首相は言うが、それは民主主義の本質を理解していないからである。そもそも民主党政権時代に、ねじれ国会を利用して何でも反対を貫いていた自民党の指導者が、今更野党に反対するな、などと叫ぶのは、天に唾するようなものである。また、安倍首相や彼が任命した行人が愚かな言動や行動を繰り返すのを見れば、それを批判し、反対するのは当然である。

 責任野党という疑似餌につられて権力に食いつき、いいように利用されて、最後には政党としての命脈が尽きるという道筋が、みんなの党や日本維新の会の政治家に見えないとすれば、度し難い政治音痴である。そんな連中はすぐに政治の世界を離れる方が、当人と国のためである。


東京新聞2月2日


2014.01.28 Tuesday 14:52

フォーラム札幌時計台ファイナルシリーズ

3月6,7の両日夕方から、フォーラム札幌時計台ファイナルシリーズを開催します。
最初、友人諸氏には無料公開といったのですが、参加人数の事前把握など、実務的な必要もあり、有料の企画としました。ご了解ください。
私の札幌での生活の最後を飾るイベントになるので、優れた研究者、作家の方々にゲストをお願いしました。
ぜひおいでください。
なお、チケットはプレイガイドのみの扱いで、私の手元では販売しません。

2014.01.28 Tuesday 14:46

歴史に学べるか?

  11825日の両日、NHK総合で放送された「足尾から来た女」というドラマには感動した。柄本明演じる田中正造が真に迫っていた。ドラマで描かれる谷中村が今の福島に重なり、涙を禁じ得なかった。

 考えてみれば、日本人は百年前に富国強兵のために特定の地域を切り捨てるという罪を犯した。劇中、谷中を切り捨てる側に回ったヒロインの兄が、足尾の銅で弾丸を作り、それで日本が戦に勝ったと抗弁するシーンがあった。第2次大戦後は、戦の代わりに経済成長が置き換わっただけで、構図は同じである。水俣、沖縄、福島の受難を見れば明らかな通り、谷中村滅亡から百年間、日本人は何も学ばなかった。

 部分を切り捨てて全体の繁栄を求めるという方法を田中正造は野蛮と呼んだ。そんな道を進めば、全体も滅んでしまうと正造は必死で訴えた。先週行われた名護や南相馬の市長選挙の結果は、正造の教えを受け継ぐ人々による、国全体に対する懸命の叫びだと思う。

 原発を争点に東京都知事選挙が始まった。歴史を振り返ることは、自らを貶めるためではない。我々がこれから、野蛮の道を続けるのか、文明の道に転進するのか、歴史を顧みることによって賢明な判断ができるのである。このタイミングで意思表示の機会を得た都民の責任は重い。

東京新聞1月26日


<<new | 1 / 132pages | old>>
 
RECOMMEND
CALENDAR
NEW ENTRY
ARCHIVES
CATEGORY
COMMENT
PROFILE
MOBILE
LINK
SEARCH
OTHER

(C) 2014 無料ブログ JUGEM Some Rights Reserved.