2018.07.03 Tuesday 18:37

倦まずたゆまず

 先週も政治の堕落を物語る出来事がいろいろと起こった。加計学園理事長が開いた記者会見らしきもの。自民党議員が委員会の受動喫煙の制限を求めたがん患者でもある参考人に暴言を吐いたこと。今や、不祥事は安倍政権の日替わりメニューとなった。
 しかし、私自身が安倍政治の毒気に当たったようだ。デモや集会で話をするのも我ながらマンネリだと思う。けしからんことを次々あげつらっても、どうせ高度プロフェッショナル制度もカジノも淡々と進むのだろう。安倍首相はやすやすと自民党総裁3選を決めるのだろうと思うと、批判の筆を執る気力が起こらない。ぼんやりしているうちに土曜の午後になり、編集部から督促の電話を受ける羽目になった。
 政権批判の先鋒を任じてきた私がこの体たらくでは、まさに向こうの思うつぼである。ここは同じことの繰り返しと言われようとも、おかしいことをおかしいと言わなければならない。
 同時代の読者だけに読まれると思うから、マンネリだと感じるのだろう。80年前、石橋湛山や清沢冽のような勇気あるジャーナリストは過酷な環境で政権批判を繰り返していた。今我々はそれを読み、勇気を得る。ならば我々も、2010年代の日本の愚かさを書き残すことが同時代のみならず、後世の日本人に対する責務となる。

東京新聞 6月24日

2018.07.03 Tuesday 18:36

戦争を終わらせる


 安倍首相が日米は完全に一致と叫んできた以上、米朝首脳会談を受けて、日本も北朝鮮との国交正常化に向けて努力を始めなければならない。険しい道のりだろうが、自民党総裁選の三選も確実視される中、ここは安倍首相にぜひ難事業を成し遂げてもらいたい。
 日朝国交正常化は、日本にとって第2次世界大戦、およびそれに先立つ植民地支配に最終的に終止符を打つ作業である。それこそ歴史に名を残すチャンスである。北朝鮮には巨額の賠償あるいは資金援助もしなければならないだろう。日本国内の右派は反対するかもしれないが、それを抑え込むには安倍首相が最適任である。首相が政治生命をかけて取り組むと言えば、朝鮮総連本部を銃撃したような右翼も、静かにするのではないか。
 安倍首相は、長期政権を維持するために、たびたび北朝鮮の脅威を利用してきた。国難を煽り、国民の中に不必要な恐怖や憎悪を創り出した。圧力一辺倒を唱えていた時には、朝鮮半島に平和をもたらすより、緊張が継続した方が好都合といわんばかりの本音が透けて見えた。
 北朝鮮との対話が困難な環境を招来したのは安倍首相自身である。したがって、自分で蒔いた種は自分で刈り取らなければならない。皮肉ではなく、安倍首相の決意を期待したい。

東京新聞6月17日

2018.07.03 Tuesday 18:36

勧善懲悪の幻想

 財務省における公文書改ざんに関する内部調査の結果が公表された。肝心の改ざんの理由は明らかにされず、麻生財務相は、動機が分かれば苦労はないと、責任者にあるまじき放言をした。
 遠山の金さんや桃太郎侍のような時代劇なら、この場面は、不埒な悪行三昧は許さないとヒーローが悪漢を成敗するクライマックスだろう。しかし、現実の世界にはそんな正義の味方は存在しない。いや、存在してはいけないのだ。民主主義とは、権力者が不埒な悪行を働いた時に、国民自身がこれを成敗する仕組みである。腐った権力者を排除する仕事をヒーローに委託すれば、新しい専制を作り出すもとになるかもしれない。
 野党は少数であり、国民が怒っても権力者は居座りを決め込む。しかし、おかしいことをおかしいと認識し、まともな道理が通る政治を取り戻したいという倫理観を保持していれば、いつかチャンスは来る。今日は新潟県知事選挙の投票日である。新潟県の課題である原発再稼働や農業の持続について県民が的確な選択をすることは、日本全体で正しい方向を回復することに直結する。
 国会前では、大集会が開かれる。国会の外で声を出しても意味はないと冷笑したい奴にはそうさせておけばよい。民主主義を守るには長期的な楽観主義が必要である。

東京新聞 6月10日

2018.07.03 Tuesday 18:35

国会法104条


 5月31日大阪地検は、公文書改ざんや国有地不当値引きに関わった疑いのある財務省職員をすべて不起訴にすると発表した。司法による追及の可能性がふさがれたら、国会で追及するしかない。
 参議院予算委員会は、加計学園に関わる資料について愛媛県に続き、今治市にも提出要請している。この要請の根拠となった国会法104条は、官公署はその求めに応じなければならず、資料を提出しない場合には、その理由を疎明しなければならないと定めている。さらに、その理由を受諾できないときには記録の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することができると規定している。
 今治市が資料を提出しなければ、参院予算委はその理由を聞いたうえで、同市の資料の公開が国家の重大な利益に悪影響を及ぼすと安倍内閣に声明を出すよう迫ることができる。自分に不都合な資料公開を国益に反するというなら、それこそ笑いものである。
 鍵は、参院予算委の決意にある。今までの資料提出要請は与党も含めて合意したことである。国会法の規定を用いて安倍政権の責任を明確にすることは、与野党を超えた国会の使命である。参院予算委のメンバーは、腐敗した安倍政権の下僕になるのか、国権の最高機関の一員としての責務を果たすのか、熟考すべきである。

東京新聞6月3日

2018.07.03 Tuesday 18:34

傲慢の時代


 政府・与党は、いわゆる働き方改革関連法案を力ずくで衆議院を通過させた。これは、エリートの傲慢という日本の時代精神を象徴している。
 まず、働き方改革という名前そのもの、そしてその中心である高度プロフェッショナル制度は、働く人をモノ同然に扱いたいという経済エリートの傲慢、強欲の産物である。高プロは、一定年収以上の専門職について、定額俸給でいくらでも働かせることを可能にする制度である。その適用範囲が低い所得層に拡大されるだろうことは、過去の派遣労働の拡大の歴史に照らしても、確実である。現代の資本主義は、マルクスの時代のように、人を無際限に使役する野蛮に逆戻りしているようだ。
 そして、この立法過程は政治・行政のエリートの傲慢を象徴している。法案が必要な根拠として厚労省が提示した労働実態に関する調査には多くのミスやでたらめが発見された。それにもかかわらず加藤厚労大臣は法案を推し進め、国会質疑で野党議員から理詰めの追及を受けると、あさっての返答を繰り返し、審議を崩壊させた。そして、過労死被害者の遺族が話し合いを求めても追い返した。この法案を推進する政治家と官僚は、国民と野党政治家を対等な人間とは思っていないのである。
 経営者、大臣、官僚はそんなに偉いのか。

東京新聞5月27日

2018.07.03 Tuesday 18:30

言論の崩壊


 14日の予算委員会で、玉木雄一郎議員が朝鮮半島対応について質問した。安倍首相は日米一体というが、米国にとっては長距離巡航ミサイルがなくなれば本国への脅威はなくなるので、米朝首脳会談の中で手打ちをする可能性がある。しかし、日本にとっては中短距離ミサイルの残存は脅威である。この点を安倍首相はどう考えるかという、極めて重要な問いであった。この時、麻生副総理がヤジを飛ばし、議場は紛糾し、結局この質問に首相が答えないまま時間切れとなった。
 大事な問題についてまじめに話し合うという姿勢を捨てたら、国会に一体何が残るのだ。都合の悪いことをきかれると騒ぎを起こしてごまかそうとする麻生氏の態度は幼稚園児並みである。幼稚園でももっと行儀のよい子はたくさんいるだろう。安倍首相が議会制民主主義を重んじるなら、麻生大臣を罷免すべきである。
 現憲法下では、野党議員の質問やメディアにおける政権批判の言論を政府が力ずくで弾圧することはできない。わざわざ力を振るわなくても、相手を馬鹿にし、きかれたことに答えず、言葉の意味を崩壊させて議論を不可能にすれば、批判する側は次第に疲れ、あほらしくなって、批判をやめるかもしれない。これは安倍政権が発明した21世紀型の言論弾圧かもしれない。ここは辛抱のしどころである。

東京新聞5月20日

2018.07.03 Tuesday 18:29

諸悪の根源は経産省


 安倍政権を支える実働部隊は経産省の官僚である。現総理秘書官の今井尚哉氏、先日参考人招致された柳瀬唯夫元秘書官は、いずれも経産省の官僚であり、政権運営の鍵を握っている。政策の基本的枠組みを打ち出すのは日本経済再生会議、産業競争力会議などの審議機関である。これらは省庁にまたがる課題についてトップダウンで方向性を指示する機関だが、これらの議論を誘導するのは加計学園案件に関して活躍した藤原豊氏のような経産官僚である。
 バブル崩壊後、経済成長の戦略を描くべき経産官僚は何一つ成功していない。経産省が執念も燃やす原発輸出にしても、民間企業では背負ないリスクが広がっている。自分の本業がうまくいかないものだから、労働、農業、医療、教育など他の畑を荒らしに行って、それらの世界で長年存在したルールを壊し、新しいビジネスチャンスを作ることを自分たちの手柄にしようとしている。
 これから国会審議の焦点となる働き方改革にしても、日本経済再生会議が産業競争力の強化のために打ち出した労働法制改革を土台としている。成長のために労働者にもっと働かせろという発想がその根底にあるように思える。
 森友、加計問題も徹底的な究明が必要だが、経産省が日本をおもちゃにしていることを厳しく追及する必要がある。

東京新聞5月13日

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