2016.07.30 Saturday 14:29

参院選の帰結と今後の政党政治


 私自身、今回の参院選では市民連合(立憲主義の回復と安保法制の廃止を求める市民連合)の言いだしっぺとして野党結集を呼び掛け、1人区を中心に全国を走り回って野党候補を応援した。今の与党に参議院でも3分の2以上の議席を与えることは日本の立憲民主主義を破壊するという危機感ゆえの行動だった。この観点からは、今回の参院選は野党の敗北である。私たちの危機感を国民の多数が共有しなかったことは、野党と私たち市民団体の力不足というほかない。
自民党の比例票は2千万票を超え、首都圏の選挙区では複数当選を実現した。公明党も完勝であった。選挙後、無所属議員の入党を加えて、自民党は参議院でも単独過半数を回復した。思い起こせば1989年の参院選における自民党大敗から日本政治の動乱が始まったのだが、安倍晋三総裁はこれに終止符を打ったということになる。
 もちろん、衆参いずれの自民党議員も、選挙の際には公明党の協力に頼っているので、単独過半数の回復が連立の解消につながることはないだろう。それにしても、憲法や安全保障問題で自民党が公明党とは異なる政策を追求するうえで、公明党の抵抗力が一層低下することもありうる。選挙戦では憲法問題を封印した安倍首相だが、選挙が終わったとたんに自民党の憲法草案をベースに憲法改正論議を進めたいという意向を明らかにした。今後自民党が打ち出す改憲論議については、国民との間におけるインフォームド・コンセントの欠如という批判を続けていくしかない。
 野党は敗北したとはいえ、ギリギリのところで踏ん張ったという評価もできる。特に32の1人区のうち11で勝利したことで、野党協力はある程度の成果を上げたということができる。民進党が大敗していれば、昨年夏の安保法制反対以来のリベラル路線、およびそれに基づく野党協力が失敗したことになり、民進党はその反動で右傾化したに違いない。そうなると、巨大与党自民党の周りをいくつかの政党がさまよう一党優位体制が出現しただろう。そうした最悪の事態だけは防げたということができる。
 この結果を受けて、安倍政権との対決姿勢と国政選挙における野党協力路線は続くことになる。野党結集と立憲主義の擁護を叫んだ私にとっても望ましい展開ではある。しかし、ここから野党を再生させ、政権交代を展望するまでにはいくつもの難関がある。
 3分の1を攻防戦にした野党結集は、昔の55年体制をほうふつとさせる。3分の1と2分の1の距離はきわめて大きい。社会党は3分の1で満足し、2分の1を目指す努力を放棄した。その結果自民党による長期政権を許すこととなった。今の野党の協力路線が持続されれば、3分の1を確保するくらいの効果はあるだろう。しかし、2分の1を目指す体制を作れるだろうか。
 選挙後の世論調査で、『朝日新聞』は、与党大勝の理由として、国民の7割以上が「野党に魅力がない」ことを挙げ、その割合は民進党、共産党に投票した有権者でも同じであった。しかし、魅力ある野党とは形容矛盾である。魅力がある政党は選挙で勝って、すぐに与党になるはずである。野党が安倍政権の政策に反対を唱えるだけでは頼りない、野党も経済政策について対抗するビジョンを打ち出せという声があることは重々承知している。私自身、野党候補を応援するときに暴走を止めるなどという後ろ向きの言葉を使うのは夢がないと感じてきた。だが、所詮野党の政策は絵に描いた餅である。権力を持たない野党が、政権交代にもつながらない参院選で政策を訴えても現実味はない。
 加えて、野党が抵抗路線を取らざるを得ない理由は、安倍政権の側にある。昨年の安保法制成立後、谷垣禎一幹事長が安倍首相に、安保の後は池田勇人のように経済中心の政権運営をするよう進言したことがあった。安倍自民党が集団的自衛権行使容認で満足し、憲法改正を棚上げにすれば、民主党・民進党がここまで抵抗路線を取る必要はなかった。安倍首相が憲法改正に固執し、政府与党の要人からも自由や人権を脅かす発言が続いたことで、野党と市民運動には憲法と民主主義の危機という感覚が広がり、それが野党協力の土台となった。選挙後、社民党と生活の党が統一会派を作ることになるが、共産党以外の野党が統一して大きな対抗力を作り出すことは必要だと私も思う。
 ただし、抵抗のための野党協力が続けば、そのうちに民進党の中も割れてくるだろう。大阪維新などと連携して、自民党政権に是々非々の姿勢で向き合うという路線を取る政治家が次の再編を起こすかもしれない。
 野党結集が憲法破壊への抵抗というベクトルから、政権交代と政策刷新という前向きのベクトルに変わることは、いかにして可能か。それこそ、今私が最も悩んでいる問題である。内政に関しては、アベノミクスに対抗して、格差・貧困問題の解消に取り組み、雇用と生活の安定から内需主導の程よい経済成長を追求するという政策の処方箋は既に存在する。民主党政権時代から、神野直彦氏などが提言してきた路線は今でも有効である。しかし、消費税によって財源調達を行うという話が出たとたんに、民進党以外の野党からは猛烈な反発が生じる。衆院選での政権構想となると、前途遼遠である。
 今、東京都知事選挙が行われている。ここで野党結集が成功すれば、民進党のリベラル路線と野党協力は当分続くだろう。美濃部都政の時のように、東京都から政策のイノベーションを起こすということもできるかもしれない。人々を鼓舞するシンボルと、社会を造り変えるための論理の両面を追求するという難しい課題に、野党と市民運動は取り組んでいかなければならない。

週刊東洋経済7月30日号

Comment:
2016/07/31 1:47 AM, 金払え wrote:
しかし与野党共にパクりまくるくせに
誰も正当な対価を払おうとしない
俺はボランティアとか大反対なんだ
正当な対価はもらうべき
まして持ってる人にボランティアだの論外
それが一億総活躍社会だと思うんだが
2016/07/31 3:24 AM, 金払え wrote:
じゃよろしく
2016/07/31 3:38 AM, 金払え wrote:
taikawoharae@gmail.com

じゃよろしく
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