2019.04.11 Thursday 17:33

生命の尊さ


 人工透析を打ち切った患者が死亡した事件を機に、人間の生命の尊さについて考えなければならない。この事件は偶発的なものではなく、生命を軽んじる風潮の現れだと思える。
ある雑誌の新年号で、若手の評論家が、死の1か月前に医療をやめれば医療費が大幅に削減できると発言し物議をかもした。少し前には、維新から衆議院選挙に出馬した人物が、人工透析患者は自業自得なので、費用は全額自己負担にせよと発言し、批判を浴びた。前者は無知、後者は確信犯という違いがあるように思えるが、支払い能力によって命の長さに差ができることを当然と考えていることは共通している。
今月初め、日本産科婦人科学会は、出生前診断の手続きを簡易化する方針を打ち出した。もしこれが普及すれば、子供が障害を持って生まれたことは親の自己責任という感覚が一般化する恐れがある。そうなると社会福祉は大きく後退する。
 救うべき命と救わなくてもよい命が区別できるという議論を始めたら、個人の尊厳、平等という近代社会の根本原理は崩壊する。生きるに値する人と値しない人をどう識別するのか。それが可能だと言い出せば、生きるに値しない人間を大量にガス室で抹殺したナチスの思想に限りなく近づいていく。我々は正気を保たなければならない。

東京新聞3月17日

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