2004.01.16 Friday 23:05

02年9月:ドイツ総選挙とイラク問題

九月二三日に行われたドイツの総選挙では、大接戦の末社会民主党・緑の党連合が辛勝し、シュレーダー政権の続投が決まった。内政、外交の両面でこの選挙の持つ意味について考えてみたい。

 内政面では、数年前に大きな期待を集めた中道左派の政策が効果を上げず、国民の不満を集めていることが、社民党の苦戦につながった。私自身、イギリス労働党の「第三の道」やドイツ社民党の「新しい中道」という理念を日本でも取り入れたいと考えてきた。しかし、グローバルな競争が激化する経済環境の中で、雇用に関して実績を上げることは難しいようである。また、ヨーロッパ連合による経済統合の中で、一国の政府が採りうる政策の幅は大きくないことも事実である。しかし、ここで確認しておくべきことは、ドイツでは脱原発政策の推進や環境を基本にしたまちづくりなど、未来に向けた政策を着実に実行に移しているという点である。同じようにグローバル化への対応で苦悶している日本とドイツであるが、「負の遺産」の整理が終わらない後ろ向きの日本と、未来を先取りしようとしているドイツとでは、対照的である。

 内政面で批判を浴びていたシュレーダー政権は、アメリカによるイラク攻撃を徹底的に否定することで、国民の支持を集め、逆転に成功した。その根底には、ドイツ国民の平和意識があるように思える。平和意識といっても、日本とドイツでは前提が異なる。ドイツは国防軍を持ち、NATO軍の一員として行動している。しかし、軍事力を行使するのは自国の防衛と、ユーゴスラビア内戦のように正義、人道が脅かされている時だけだという原則は徹底している。昨年の米軍によるアフガニスタン攻撃に参加したことが正義と人道にかなうものであったかどうかは疑問だが、ともかく軍の行動について一線を画そうという意志を政府の指導者が持っていることはよくわかった。

 アメリカはこうしたドイツ政府の姿勢に不快感を表している。そして、戦争問題を国内政治に利用したという批判を浴びせている。しかし、戦争を選挙に利用しようとしているのはアメリカの方である。一一月にはアメリカでも中間選挙が予定されている。アメリカでは株価下落、企業の不正経理の続出など、内政面ではブッシュ政権によい材料はない。特に、企業不正に関してはブッシュ大統領を始め、政権の幹部も不正経理によって濡れ手で粟の大もうけを図ったのではないかという疑惑が指摘されている。こうした苦境を打開するために、イラク攻撃に国民の目を向けようとしていると解釈されても当然である。

 イラクの大量破壊兵器開発を止めさせるというのがアメリカによる軍事攻撃の口実である。しかし、フセイン政権を軍事力で倒すことは、大量破壊兵器の放置よりも遙かに大きな危険を中東地域、さらには世界中にもたらすであろう。ドイツの総選挙に現れた国民の意思も、その点に関する憂慮の表明であった。

 我々自身も、日本政府がこの問題にどう対応するかについて答えを出さなければならない。たとえ国連決議に基づくものであっても、正義と人道に照らして日本は米軍主体の軍事行動に協力をしないという場面があるのは当然である。政府の指導者が自衛隊の行動に一線を引くことが、シビリアン・コントロールの基本である。

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