2006.08.07 Monday 02:02

06年8月:ポスト小泉レースをめぐる感想

 福田康夫氏が出馬を断念したことで、自民党総裁選挙は消化試合になったという嘆きがメディアのあちこちから聞こえてくる。しかし、自民党内の政策論争を求める一見もっともらしい正論は、根本的に的外れだと私は考えている。

 自民党総裁選挙は国会議員の選挙ではない。この選挙で実際に影響力をもてるのは、自民党の国会議員である。一般党員も投票はできるが、一票の重みはまったく異なる。普通の国民にとっては単なる見世物でしかない。見世物を派手に演出して、国民も参加しているような幻想を振りまくことは、偽物の民主政治である。そもそも昨年の総選挙で国民は小泉総理・総裁に最大限四年の任期を与えた。にもかかわらず、自民党の党則と小泉自身の飽きで総理の座を放り出すというのは、憲政の常識に照らせば国民に対する背信行為である。もうすぐ辞めるとはいえ、首相は首相である。海外歴訪で散々馬鹿さ加減をさらけ出した小泉首相に対して、日本のメディアはもっと厳しい批判を加えるべきである。また、自民党が真に日本の品格を重んじる責任政党であるならば、そうした空虚な首相に対する反省の上に後継者選びを行うはずである。

 安倍晋三氏以外に小泉後継が見つからないということは、自民党内の大勢が小泉路線の継承を支持していることを意味している。それはそれで、総裁選挙の重要なメッセージである。今までの自民党には、ある程度の自己修正作用が存在した。あるときの首相が行き過ぎや失敗で退陣すれば、次の首相は反対のイメージを演出して国民の目先をかわすという振り子の論理である。主流?反主流の派閥争いも、振り子の論理の原動力となったという点では決して無意味ではなかった。

 しかし、小泉政治の五年間で、自民党は新自由主義と対米従属路線に純化され、敵対する者は党外に追放され、党に残った者も逼塞を余儀なくされている。要するに自民党には人材が払底している。昨年の選挙で頭数は増えたが、政党としての生命力は低下している。小泉政治の矛盾が噴出してくるのは、これからが本番である。そうした課題に対応するためには、小泉政治を厳しく検証し、これを否定することが必要となる。しかし、毛並みがよいだけがとりえの安倍晋三にそうした「父親殺し」ができるはずはない。小泉政治がもたらした棄民政策に対して国民が怨嗟を募らせる中で、安倍は難しい舵取りを迫られるに違いない。

 小泉政治という見世物は終わった。これからは政治の動乱が始まるに違いない。問題は野党の態勢である。安倍政権はイギリスのサッチャー政権を引き継いだメージャー政権のような位置づけになる。一九九二年の選挙では、当時の野党労働党はメージャーを侮って、油断していまい、思わぬ敗北を喫した。民主党にはこれから必死の戦いが求められている。繰り返しになるが、国内における新自由主義、対外政策における対米従属という二つの柱に対して、別の政権構想を突きつけることこそ野党の課題である。メディアの関心が自民党総裁選に集中するのは仕方ない。消化試合に対するつまらないコメントがあふれている隙に、きちんとした党内論議で政権構想を固めるべきである。(週刊金曜日8月4日号)


Comment:
2006/08/16 1:31 PM, 漆山 治 wrote:
漆山 治と申します 退職後、政治・経済などについて評論を書いています。民主党の政権奪取について、アイディアを書きましたご高覧下さい。 http://homepage1.nifty.com/urushiyama/essei2/essei_13.html" rel="nofollow">http://homepage1.nifty.com/urushiyama/essei2/essei_13.html
2006/08/16 9:32 PM, KY wrote:
夏休み中に、日本とフランスー2つの民主主義ーという本を読みました。この中で言われているように、日本ではアメリカ型の自由主義はよく知られているけれど、他の選択肢についてはあまり情報がないということで、フランスを中心にした社会民主主義の紹介を面白く読みました。 現在入れたい政党がないという有権者は少なからずいると思います。格差社会が流行語にもなっていますが、日本人には多少不自由でも平等を重視する政策の方が向いているのでは。また大半の人が、そんなにも金儲けに専心して勝ち組になりたがっているとは思えません。金儲けと知性や教養は反比例する場合が多々あること、楽しく人生をすごすのに、必ずしもお金が必要ではないことを短期間過ごしたフランスで学びました。 右や左のイデオロギーにあまり興味はありませんが、健全な社会民主主義に基づいた政党が選択肢として日本にもほしいと思います。民主党がこの選択肢になりうるか、政治家だけでなく一般の有権者も努力が必要ですが、なにぶん一般の会社員だと仕事や子育てに忙しくてなかなか政治にまで時間がさけないと思います。 マスコミはかなりの部分あてにならないことが昨年の選挙ではっきりしたので、右にせよ左にせよ日よらない知識人の役割がとても重要だと思います。山口先生もぶれない知識人の一人として、より一層わかりやすく情報発信していただきたいと思っています。
2006/08/17 7:00 AM, 新党を欲する人 wrote:
小泉は 猿真似おやじ 中曽根を真似 アメリカを真似  行き着くところは 棄民 あんな糞は 今後 徹底的な検証を重ねて 糾弾すべきです あんな糞を のうのうと 許してきたのは バカなわれわれ 国民です
2006/08/18 10:54 PM, やまっち3(社会人・37歳) wrote:
ん〜…。 小泉純一郎クン…。 何だったのでしょうか? 北朝鮮の拉致問題は、横田めぐみさんの件を除けば、一応の進展・前進は見られたかも知れません。(曽我ひとみさん、蓮池薫さん 等本国復帰) その反面、本年8月15日の靖国神社参拝は、日中・日韓関係に(特に経済面に影響が出ると見られる) 悪影響をもたらし、地方の市町村合併政策(財政赤字削減目的)は、果たして本来の意義を果たせるのでしょうか? 私は民間企業に勤務していますが、顧客データ等の新住所変換作業には、各企業とも膨大な時間・労力を費やしているものと、想像出来ます。 今思えば、バブルが破綻し、少子高齢化が加速し、正規社員の雇用よりも、契約社員・パート等の比率が高まり、フリーター・ニートの増加が顕著となりつつあった窮時日本で、小泉純一郎クンの一国の総理大臣任命・その後の期待は、ある意味、日本国民の「やけくそ、こうなったら、宝くじでも一等当たってみろや〜!」的な人気ではなかったでしょうか? アメリカ合衆国の国際貿易センタービルのジェット機ハイジャック・突入事件の報復行為とも思える イラク戦争の強行突入(国際連合は反対、小泉日本は賛成)は、多くの犠牲者(女性・子供を始めとする民間人含む)をもたらし、自衛隊の海外派遣をも必要とさせる事態になってしまった。 このとき、小泉純一郎クンは、「この戦争は、正しい戦争だった。」と、報道陣の前でコメントした。 バカモン! 民間の女性・子供たちが犠牲になった戦争が「正しい」だと。 アホ抜かすな! しかも、戦争放棄の日本の首相だぞ! 太平洋戦争の突入の原因となった「日独伊3国軍事同盟締結」のときの海軍大臣:及川古志郎の「已むを得まい!」のコメントと大して変わらん。 戦後61年、又しても日本は同じ過ちを繰り返すのか? もう、日本はコントロールを失ったかも知れない…。 神の御加護を祈るより、他になす術は無いのか…。
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