2010.01.20 Wednesday 00:48

小沢は何と戦うべきか

 石川知裕代議士が逮捕された翌日、鳩山由紀夫首相が小沢一郎幹事長に「戦ってください」と述べた。もし、小沢に何のやましいこともないならば、民主政治を守るために戦うことこそ必要である。しかし、この戦いの意味づけを誤れば、最初から勝ち目のない戦いに突入し、玉砕するという悲惨な結末が見えている。小沢が転べば民主党政権が倒れ、民主党政権が瓦解すれば日本の民主政治が再び混迷に陥る。小沢および民主党の首脳には、十分な戦略を練った上で戦いに臨んでほしい。

 小沢が検察と裁判闘争を戦うと考えているとすれば、それは最悪の錯誤である。仮に最終的に無罪を勝ち取ることができるとしても、それまでの長い戦いの中で民心は民主党を離れ、政党政治はあてどのない漂流をつづけるに違いない。それは、政権交代に希望を託した国民にとって、迷惑千万な話である。

 今回の戦いは、あくまで政治闘争である。裁判闘争では、挙証責任は検察が負う。検察が犯罪事実を証明できない限り、小沢側は潔白である。しかし、政治闘争とは、リングに上がって相手と殴り合う戦いではなく、国民環視のもとでどちらが説得力、訴求力のあるパフォーマンスをするかという戦いである。したがって、政治闘争ではむしろ小沢が挙証責任を負うことを覚悟すべきである。

 その点は、小沢と民主党が今まで何と戦ってきたのかという点とも重なり合う。民主党は、政治家が公共事業の上前をはねる、疑惑があっても多数党の力で国会における真相解明に蓋をするなどといった古い政治の手法や体質を破壊するために、今まで戦ってきたのではないか。その努力が昨年夏、ようやく実を結んだばかりである。

政治変革の大業が緒に就いたばかりなのに、検察が横槍を入れたという小沢の憤りは、小沢の指導力に政権交代の希望を託した私には、よく分かる。しかし、小沢は今回の戦いを裁判闘争に矮小化してはならない。国民生活や景気対策を盾に野党の追及を封じるというのは、民主党が否定してきたはずの古臭い手法である。小沢および民主党が政治変革を実践したいならば、自ら進んで国会や公開の場に出て、あらゆる質問に対して自らの言葉で答えることで、検察に対して先手を取るべきである。そうした捨て身の戦いをしなければ、今回の危機を乗り越えることはできない。小沢個人にそうした決断ができないならば、民主党という政党の政治的能力が問われることとなる。

 繰り返す。政権交代が烏有に帰すならば、国民は民主政治に絶望するしかない。日本の政党政治が瀬戸際にあることを、小沢および民主党の指導部に銘記してもらいたい。(1月19日朝日新聞)


Comment:
2010/01/20 5:15 PM, KY wrote:
>その点は、小沢と民主党が今まで何と戦ってきたのかという点とも重なり合う。
>民主党は、政治家が公共事業の上前をはねる、疑惑があっても多数党の力で国会に
>おける真相解明に蓋をするなどといった古い政治の手法や体質を破壊するために、
>今まで戦ってきたのではないか。

多くの中堅民主党議員についてはそれがあてはまるのでしょう。しかし、政権交代が、個々人のしなやかなネットワークと自由闊達な議論という民主党本来の強みよりは、小沢の旧来的手法と鳩山のブランド・資金力といういわば旧来的な要素があってこそ可能だった、おまけにこの疑惑を前に不気味な沈黙と拍手喝さいを繰り返すだけの、劣化田中軍団かと見紛うばかりの子飼い議員を大量生産してしまったところに最大の矛盾があると思います。菅や岡田以下のメンバーによる再出発が必要ではないでしょうか。
2010/01/22 5:59 PM, k wrote:
若者のための政治マニュアルについて10のルールから特に重要なものを2〜3つあげその考えを述べていただきたい。
できれば2000字以上で!
2010/01/24 3:21 PM, こんな文章が wrote:
山口先生、こんな文章がありました。本当に、ここであげられているように、読売新聞でこのような発言をされたのですか?

陰謀論的ジャーナリズムの形成(2):山口二郎の場合
http://watashinim.exblog.jp/10687172/
2010/01/27 8:32 PM, 富士 三郎 wrote:
 「陰謀論的ジャーナリズムの形成(2)・・」を読みました。
山口二郎氏の擁護論ですが、曲解もある。私は、60歳代の人間で、松川事件を思い出します。あれは全くの濡れ衣事件で、
被告の方々は最高裁で無罪になったのかな?しかし、進歩的な陣営の受けた打撃は、取り戻せず、アメリカ言いなりの保守支配が今まで続いてしまいました。小沢一郎幹事長は、昨年の絶妙なタイミングの代表辞任の経過を思い起こし、今慎重に考えているのではないか。山口二郎氏の見解はそれを示唆し、あるいは促す見解と見たい。
2010/01/27 11:26 PM, 富士さま wrote:
残念ながら「陰謀論的ジャーナリズムの形成(2)」は、山口氏の擁護でも何でもありません。過去の学生運動系の文体をまねて持ち上げていますが、あれは山口氏を痛烈に批判している文章です。より正確に言うと、場合によっては痛烈に批判するぞ、という構えを見せている文章です。場合によってというのは、山口氏のコメントが載った新聞二紙の画像があったかと思いますが、一日違いで180度違うことを山口氏は言ってしまっています。一貫性がないのです。誰に向けて発信するかにもよるのでしょうが、端的に言えば政治センスの悪さを露呈しています。
あの文章は、システムとして三権分立が機能している以上、検察が疑惑を追及するのは当然という前提で書かれています。これはその通りなのです。「国策操作」云々というのは、そのシステム自体が崩壊していることを発言の前提にしていることを意味します。
山口氏は国家の制度を踏まえたうえで発言してほしいものです。
2010/01/28 8:54 PM, 富士三郎 wrote:
「富士さま」の文章読了。私の文章を読んでくれて感激。今後も
各方面の文章を注意深く読みつつ、事の推移を見ていきたい。
2010/02/05 7:54 AM, cb wrote:
小沢さんは存在そのものが悪なのですか。
すごい陰謀論ですね。
左派が揃って差別を行うとは。
2010/02/08 6:44 AM, さとし wrote:
小沢さん含め民主党は、国民の無関心と闘うべきです。そして貴方は学生に上手く浸透するよう教育すべきです。
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