2011.01.13 Thursday 00:00

2011年の政治

 

 1月冒頭の原稿なので、今年の政治を展望してみたい。今月下旬には通常国会が召集されるが、この国会ほど不安定要因が目白押しの国会も珍しい。ねじれ国会における予算と関連法案の成立、小沢一郎元代表の国会招致、統一地方選挙など、菅政権にとっては茨の道が待ちかまえている。仮に野党の攻勢をかわして予算を成立させることができたとしても、統一地方選挙を戦えないという地方組織の悲鳴が高まれば、民主党内で菅降ろしの動きが激化するかもしれない。まさに内憂外患の菅政権である。

 しかし、菅首相自身は至って意気軒昂である。年末の1226日、菅首相に招かれて首相公邸に行き、日曜日ということもあって2時間ほど話をした。最近の民主党政権の体たらくについて、政権交代を主張してきた私などリフォーム詐欺の片棒を担いだようなものだと公言したことが首相の耳にも入り、今後の政権建て直しについて話をしたいということだった。

 私はまず、政治家菅直人はどこに行ったのだと苦言を呈した。そして、民主党に一度も投票したことのない人々の声を必死で聞こうとし、政権交代に希望を託した多くの国民の思いに応えていないという本欄でも書いた批判をぶつけた。首相は、法人減税については雇用の増加につなげると日本経団連からも言質を取っていると正当化した。

 その他の政権運営全般については、忸怩たるものがあるという趣旨であった。昨年6月に首相に就任して以来、参議院選挙の敗北、小沢氏との代表選挙、そして秋の臨時国会における野党の攻勢と、半年間じっくりものを考える余裕がなかったと述懐していた。政治は結果責任の世界であり、この種の言い訳には意味はない。それにしても、態勢が整わないまま政権の座に就き、次々と襲ってくる内外の課題に翻弄されたというのは正直なところであろう。

 首相は、政権交代以後の様々な失敗を総括した上で、これからは外部の識者の意見なども聞きながら、能動的に政権運営を進めたいと述べた。政治家が自ら政党政治の信用を壊していくような低劣な言動ばかりが目立った臨時国会とは違って、正面から政策論争を展開したいという意思は明確であった。

 では、首相のやる気は本当に実行につながるのか。以下は私の解釈と予想である。最初の問題は、民主党内の小沢支持グループと野党を議論の土俵に乗せることができるかどうかである。首相は、こと小沢問題となると、闘志が湧いてくるようである。年頭記者会見でも政治と金の問題に決着をつけることを今年の重要課題と位置づけた。この点については世論の支持も期待でき、小沢氏が起訴されるという展開になれば一層窮地に陥る。力関係としては、首相の強気にも根拠はある。

 しかし、小沢グループには国民との約束、マニフェストを実行するという大義名分がある。昨年末の予算、税制をめぐる政府の方針は、生活重視と逆行する印象もあるので、小沢グループは菅政権に対して国民への裏切りという攻撃を行うであろう。

その時首相の側はどのような政策の旗を立てるのか。私との会談の中で首相は、神野直彦、宮本太郎両氏が進めている福祉国家再建の路線は共有していると強調していた。経済界にゴマをすっているわけではないと言いたかったのだろう。ならば、「生活第一」という旗印を降ろすべきではない。この点で小沢氏と対立するのではなく、生活第一の実現に真に責任を持つという原則から、税制や社会保障についての体系的なビジョンを打ち出すことこそ、政策面での民主党の結束を作り出す唯一の道である。

 自民党との対決については、ある意味で話は単純である。予算は衆議院だけで成立させられるが、赤字国債の根拠法となる財政特例法など予算関連法案が成立しなければ予算の執行はできない。昨年秋の臨時国会でも自民党は倒閣、解散のためには手段を選ばないという攻勢をかけた。菅政権が最大の危機に直面した時に、自民党が物わかりよく政策協議に応じるなどということは予想しにくい。また、4月に統一地方選挙を控えているだけに、公明党も政府民主党に協力するという選択を取ることはないだろう。

 そうなると、政府民主党が政策実現を掲げ、自民党が政局を追求するという形でチキンゲームを演じるしかない。この点について、私は首相との会談の中で1995年以降のアメリカ、クリントン政権と共和党優位の下院との対決の事例を紹介しながら、この種の対立においては政府与党の方が優位に立てると述べた。この時下院は予算を否決し、クリントン政権は連邦政府の一時閉鎖という状況に突入した。そうなると、共和党が政府の仕事を邪魔しているという世論が高まり、クリントンは政治的に勝利した。

 政策対政局という対決構図ができた時、建前に縛られるメディアは政策の実現を支持するであろう。最終局面においてメディアは、国民生活を犠牲に党略を追求するという批判を野党に投げかけるのではないか。

 逆に民主党は、その時に世論の支持を得るために何が必要かということを考えて、通常国会への戦略を練るべきである。首相自身が強調しているように、政治資金をめぐる疑惑にけじめをつけることは大前提である。さらに、この1年4か月の間、民主党が国民の期待に応えることができなかったのはなぜなのか、自らの政策的失敗や稚拙な政権運営を厳しく総括し、その反省の上に政権の再出発を訴えるという明快な言葉が必要である。また、課題を厳選し、解決に取り組むという姿勢が必要である。

 まさに剣が峰の菅政権である。首相は、ここで失敗すれば日本の政党政治が1930年代のような自己崩壊の道に陥るという危機感を持って、政権運営に当たるべきである。


Comment:
2011/02/02 12:26 PM, 結城 wrote:
山口氏と同じく、このたびの政権交代とその維持を支持してきたが、菅政権の現状を見て、いよいよあきらめざるをえないと思うようになった。今般の国会は総理の政治力無能ぶりを露呈しただけだった。この山口レポートまでは呼吸だけはできるようであったが、山口氏の適切な個人的アドバイスも、菅氏には、落ち着いて受け止める能力に欠けているようだ。小生はよく言われる全共闘世代の前の反日共系全学連世代だが、菅氏はあの時代に選挙運動員をしていたそうで、ノンポリ全共闘よりも政治を理解できていない。少なくとも団塊はいまやすっかり総理大臣を信用していない。政権交代を期待した無党派層は裏切られた。一刻も早い解散総選挙以外に、かれのとる道はない。
2011/02/06 6:42 PM, 小川真一 wrote:
山口さんは人を見る目がないようですね。私よりかなり若いからムリもないのかも知れませんが。
菅を応援するに至っては、もう貴君の人間性を疑います。
世間では「空き菅」「すっから菅」「ズル菅」「嘘つき菅」とか色々言われておりますが、世間一般の人のほうが貴方のような学者よりも彼の本質を掴んでいるということです。

断っておきますが、実は私はずっと貴君を信じてついて来た者ですが、菅に関しての貴君の姿勢が余りに異常なので、この人間はどこかおかしいと思うようになったのです。

菅の消費税増税に賛同しています。日本はまだ低いと言われています。しかし、英国の消費税の実体を貴君が知らぬわけはないでしょう。英国のような課税の仕方なら、私のような貧乏人でも納得出来ますが、日本のような一律の課税では10%になったら、本当に生活が苦しくなります。貴君は消費増税に直撃を受ける低所得層に対する思いやりがない人間のようです。

小沢問題でもメディアの論調と同じく小沢に「説明責任」を求めています。
小沢氏の記者会見を一度でもご覧になったことがおありなのでしょうか?記者の悪意のある質問に対し、グーの音も出ないような明快な回答をしていますよ。私は全くの素人ですが、小沢はどんな悪いことをしたのか、可能な限り読んでみましたが、私のような素人でもはっきり結論が出ました。それは小沢問題は存在しないということです。

検察にも色々問題はあるだろうが、と故意にそっちの方には首を突っ込まないようにされていますね。
しかし私は、こっちに関しても素人ですが、矢張り色々可能な限り読んでみましたら、これは「色々問題はあるだろうが」で切り捨てられる小さな問題ではないことが分かりました。日本の司法の根幹を揺るがす問題です。山口さんほどの方がそれを知らぬわけはないはずですが・・・ということは、故意に目をつぶっているのでしょうか?
「政治とカネ」の問題は早く片付けて政策論議をと言われていますが、政治学者は政治の問題だけに興味があって司法の問題には興味がないということでしょうか?

「首相にやる気が出て来た」「権力欲は必要だ」と言われますが、我々は「総理のイスにしがみ付きたいだけ」と感じていますし、こちらの方が正解でしょう。菅が官僚と財界と米国におもねている本質を山口さんは掴めないのでしょうか?
政治学の勉強も必要でしょうが、人間の性格を勉強されることを強くお勧めします。

山口県と高知県は地方では例外的にヒステリー性の強い地域で、一言で言えばこれは「虎の威を借る狐」の性格です。高知県出身の吉田茂、山口県出身の岸信介、菅直人が出て来たのは偶然ではないのです。

菅政権は決して日本国民のための政治をする政権ではありません。


2011/02/07 8:24 PM, 加来 wrote:
あなたはもう政治を批評するのはやめた方がいいと思います。少なくともメディアでの発言はやめた方がいいのではないのでしょうか。あなたの過去の発言から考えるとあなたの批評がこの日本に役立った試しはありません。
責任ある大人としての自覚があるのなら・・・
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