2019.02.22 Friday 18:51

忖度による自縛


 辺野古新基地建設は日米同盟のために不可欠というのは本当だろうか。日本政府が米国と再交渉するのが面倒なので、遮二無二基地建設を進めているとしか、私には思えない。
 今から9年前、当時の鳩山政権の下で辺野古問題が紛糾していた時、私は当時の駐日米国大使のジョン・ルース氏と長時間話をしたことがある。彼は私に次のように言った。「新しく選ばれた政府も前の政権が外国と結んだ約束を実行しなければならないと、我々は言おうと思えば言ったが、そうは言わなかった。日本は民主主義の国であり、国民が選んだ政府が新しい提案を持ってくるなら、それもあるだろう。ボールは日本の側にある。」
 日本政府は県外移設について一度も米国に提案をしたことはない。県外移設は米国に拒絶されたのではない。それ以前の段階で、国内の諸勢力が県外移設構想をつぶしたのである。選挙で新しい民意が示され、基地建設計画を取り巻く環境が変わったと言えば、結論が変わるかどうかは別として、話し合いはできるはずである。話し合いから新たな解を見つけるのが政治の妙である。
 安倍首相は国内の権力者であり、官僚もメディアも忖度し、ご機嫌を取る。その首相も自分より強い権力者には忖度し、国民の思いを伝えることができない。これこそ、日本政治の不幸である。

東京新聞1月6日

2019.02.22 Friday 18:50

政治家に国語教育を


 今年読んだ本でもっとも役に立ったのは、新井紀子氏の『AI vs. 教科書が読めない子供たち』(東洋経済新報社)である。数学者の新井氏は、AIが人間の能力を追い越すことはないことを明らかにした。しかし、現在の若者は国語の教科書を読み、理解することがおぼつかなくなっている。
 しかし、読解力の欠如、さらには論理的思考力の喪失は若者だけの問題ではない。読者の皆さんも気づいているだろう。国を動かす指導者こそ、新井氏の本を読んで、言語によるコミュニケーションや思考の基礎を身につけなければ、日本の未来は危うい。
 今年も国会では多くの法律が成立し、審議の過程では論争があった。しかし、政府の側は捏造したデータに基づいて法案を作成するなど、論理以前の不正が横行した。また、野党議員の質問にまともに答えない不誠実が日常化し、「ご飯論法」が流行語となった。また、沖縄に寄り添うという安倍首相の言葉が空虚であることは明らかである。
 この度、日本が国際捕鯨委員会を脱退するにあたり、河野外相は日本の考えを捕鯨反対国に「丁寧に説明」したいと述べた。国会でろくに説明できない政治家が外国人を相手に何を説明するというのか。言葉や論理を大事にすることこそ、政治を立て直すための出発点である。

東京新聞12月30日

2018.12.27 Thursday 16:41

尊厳的部分

 今日は平成最後の天皇誕生日である。このところ天皇家と政府の関係が不安定になっていることがうかがえる。
 19世紀イギリスの批評家ウォルター・バジョットは、『イギリス憲政論』の中で国家機構を、尊厳的部分と機能的部分分け、ている。機能的部分とは実際に社会を統治する政府、尊厳的部分とは人々から服従や忠誠を引き出す権威とされる。そして、国王に代表される尊厳的部分が安定的統治の秘訣であるとした。
 安倍政権の最大の罪は、尊厳的部分、つまり明文化されていない権威を軽んじている点にある。機能的部分の中にも尊厳的部分のような役割を果たす公的機関がある。従来であれば、法秩序の安定性のために内閣法制局が自立した権威を持ち、通貨の信用維持のために日本銀行が中立的権威を持ってきた。しかし、この6年間、安倍政権はこれらの公的機関の人事を壟断し、政治的道具とした。
 2013年4月28日に、講和条約から沖縄が取り残されたことに心を痛めていた天皇に主権回復記念式典への臨席を求めたことから始まり、安倍政権は君主制にまで自らの政治的意思を押し付けようとしてきた。
平成の終わりに当たって、ためにする改憲議論を終わらせ、戦後憲法体制の正統性を広く確認、共有することが日本の秩序のために必要である。

東京新聞12月23日

2018.12.27 Thursday 16:40

野蛮の国

 安倍政権はついに辺野古への土砂の投入を始めた。沖縄県民の身を切られるような痛みを想像しながら、暴挙を傍観するしかないのが情けない。
 民主主義国家において、力による直接行動は、弱者、被治者が強者、権力者に対して異議申し立てをするときに、1つの方法として是認されている。黒人の政治参加の権利を求めたワシントン大行進から、最近のフランスにおける黄色いベストの運動に至るまで、市民が街頭に出て声を上げることで、強者が己の間違いに気づかされることがある。
 日本では、正反対に権力者が少数者、被治者に対して剥き出しの力を振るっている。政府は合法的手続きを取ったと言い張るが、それは防衛大臣が私人のふりをして行政不服審査に訴えたという茶番に由来する偽の合法性である。
 権力者の力ずくがまかり通るのは野蛮国である。スペインの思想家、オルテガは『大衆の反逆』の中で野蛮人の特徴として、他人の話を聞かない、手続き、規範、礼節を無視することを挙げている。日本の権力者にもそのまま当てはまる。「敵とともに生きる!反対者とともに統治する!こんな気持ちのやさしさは、もう理解しがたくなりはじめ」たとオルテガは書いた。
私たちにも、野蛮を拒絶し、文明の側に立つという決意を固めることくらいはできる。

東京新聞12月16日

2018.12.27 Thursday 16:39

人間破壊の国

 入管法改正案の審議の中で、外国人技能実習生が3年間で69人も死亡していたことが明らかになった。現在の技能実習制度は奴隷的労働の温床となっていることは明らかである。この事実についての見解を問われた安倍首相は、「見ていないから答えようがない」と答えた。これだけ多くの人命が失われているのだから、答えようがないはないだろう。審議の前日、「ややこしい質問を受ける」と軽口をたたいた挙句がこれか。
 沖縄では辺野古埋め立てのための土砂搬入の準備が進められている。土砂を積みだす施設はカミソリ付きの鉄条網で囲われたというニュースもあった。このまがまがしい鉄線は、あたかも県民を強制収容所の囚人とみなしているようで、沖縄を見下す国家権力の象徴である。
 敢えて言う。今の政府は人でなしの集まりである。外国人労働者は人間ではなく、単なる労働力であり、死に追いやられる人権侵害があっても平気の平左。沖縄で県民が民主的手続きを通して新基地建設について再考を求めても、一切聞く耳を持たず、力ずくで工事を始めようとする。沖縄県民は主権を持つ国民の範疇には入れられていない。
 人間の尊厳に対してここまで無関心さらには敵意をたぎらせるのは、あの権力者たちが人間として欠陥を抱えているからとしか思えない。

東京新聞12月9日

2018.12.27 Thursday 16:38

財政民主主義


 憲法86条は、予算は毎年度国会が審議し、議決しなければならないと規定している。 この条文が毎年度と明記していることには意味がある。多年度にわたる予算を許せば、それだけ国会の吟味がおろそかになり、国民にとって長期にわたる負担や拘束が押し付けられる危険があるからである。
 しかし、今の日本ではこの財政民主主義が危うくなっている。本紙の「税を追う」という特集が明らかにしている通り、防衛費において値の張る装備品が分割払いで発注され、将来にわたって防衛費を押し上げる構造を作っている。しかも、その装備品が本当に日本の防衛に必要かどうかの吟味は不十分で、米国の言うままに、トランプ政権のご機嫌を取るために高価な買い物をしているのが実態である。
 社会保障費の増加、災害の多発など、国の予算を必要としている問題は広がり続ける。歳出の優先順位を考えることは国民的課題である。第2次世界大戦の英雄で後に米国大統領を務めたアイゼンハワーは、退任に当たって軍産複合体が民主主義の脅威になることを警告した。そして、「警戒心を持ち見識ある市民のみが、巨大な軍産マシーンを平和的な手段と目的に適合するように強いることができる」と述べた。今こそこの言葉をかみしめなければならない。

東京新聞12月2日

2018.12.27 Thursday 16:37

支離滅裂

 消費税率引き上げと同時に中小小売店でのクレジットカードやスマホを使った決済に対しては5%分のポイントを還元すると安倍首相は明言した。安さを売り物にする家電量販店のブラックフライデーセールを思わせる気前の良さ。さすがアベちゃんと庶民が喜ぶと思っているのだろうか。この手の人気取りに騙されるほど、国民は馬鹿ではない。
 政府は、来年度予算の編成方針の中で、増税による消費減を防ぐために「あらゆる施策を総動員する」と明記する一方で、高齢化に伴い増加する社会保障費は「歳出改革の取り組みを継続する」とも宣言した。手間がかかり、効果が均等に行き渡らないポイント還元のために国の予算を使い、消費増税が本来目指していたはずの社会保障給付の確保は削減の対象になる。本末転倒、支離滅裂である。
 安倍首相は、韓国政府の徴用工や慰安婦への政策の転換について、約束が守られないのなら国家間の関係は成り立たないと厳しく非難した。その言葉は首相自身にお返ししたい。野田政権時代に、民主(当時)、自民、公明の三党間で税社会保障改革の合意を結んだはずである。増税への非難が怖くて、でたらめなバラマキをする一方、社会保障は切り刻む。これでは、政府と国民との間の信頼関係は成り立たない。

東京新聞11月25日

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